漫画『僕だけがいない街』を一気読みして後悔した話【感想・考察】

僕だけがいない街のレビュー画像
ガンマ先生

この漫画、読み終わった後にしばらく天井を見上げて動けなくなりました。そのくらい、心を揺さぶられた作品です。

あなたは「あの時、あっちを選んでいればよかった」と後悔したことはありますか?

人生は選択の連続です。でも、現実にはリセットボタンなんてない。 だからこそ、私たちはこの漫画に強く惹かれるのかもしれません。

今回紹介するのは、三部けい先生による『僕だけがいない街』。 2012年から2016年まで『ヤングエース』で連載され、「マンガ大賞」にもランクイン、アニメ化、実写映画化、Netflixドラマ化までされた、2010年代を代表するサスペンスの金字塔です。

僕はこの作品を、とある休日の深夜2時くらいに読み始めました。

「名作らしいし、1巻だけ読んで寝るか」

そう思ってページを開いたが最後。気づいたら朝の6時で、全9巻を読み終わって泣いていました。

サスペンスとしてのハラハラ感、ミステリーとしての謎解きの面白さ、そして何より、胸を締め付けられるような人間ドラマ。 全てが完璧なバランスで融合しています。

この記事では、前半は「まだ読んでいない人」に向けてネタバレなしで魅力を語り、後半では「読み終わった人」に向けて、あの衝撃のラストや犯人について語りまくっていきたいと思います。

※記事の後半から「ネタバレあり」の表記を出します。未読の方は前半部分だけを読んで、まずは作品を手に取ってみてください。絶対に後悔はさせません。

目次

僕だけがいない街ってどんな漫画?【ネタバレなし紹介】

まずは、まだ読んだことがない人に向けて、核心に触れずにこの作品の「ヤバさ」を紹介します。

あらすじ:29歳フリーターが挑む、18年前の誘拐事件

主人公は藤沼悟(ふじぬま さとる)、29歳。 ピザ屋でバイト生活を送る、売れない漫画家です。

彼には、誰にも言えない不思議な現象が起きます。 それが「リバイバル」。

「何か悪いこと」が起こる直前、自分の意思とは関係なく時間が1分〜5分ほど巻き戻る現象です。

「あ、今なんか違和感があった」 そう感じて周囲を見渡すと、落ちてくる看板から子供を救えたり、交通事故を防げたりする。

いわば「強制的な人助け能力」です。悟本人は「マイナスだった事象がプラマイゼロになるだけ」と冷めていますが、この能力が彼の運命を大きく狂わせます。

ある日、悟の母親が何者かに殺害されます。 そして、その犯人として疑われた悟に、かつてない強力なリバイバルが発動するのです。

戻った先は、5分前じゃない。18年前。 悟が小学5年生だった、1988年の北海道でした。

そこで悟は気づきます。 「母さんが殺された現代の事件」と、「小5の時に起きた連続誘拐殺人事件」が繋がっていることに。

中身は29歳、体は小学5年生。 この状態で、過去の悲劇を回避し、現代の母親を救うための、孤独な戦いが始まります。

圧倒的な「焦燥感」と「サスペンス」

この漫画のすごいところは、主人公が「スーパーヒーローではない」という点です。

悟は未来を知っています。犯行が行われる日付も、被害者が誰かも知っている。 でも、彼は小学生なんです。

  • 夜遅くまで出歩けない。
  • お金がない。
  • 大人が話を聞いてくれない。

この「もどかしさ」が、読んでいるこちらの心臓をギュッと掴みます。 「わかっているのに、防げないかもしれない」という焦燥感。

ページをめくる手が止まらなくなる理由は、この絶妙なハンディキャップ設定にあります。

【未読の人へ】ここが凄い!一気読み不可避な3つの魅力

僕がこの作品を「傑作」と呼ぶ理由は、単なる謎解き漫画ではないからです。

雛月加代という少女を「救いたい」と思わせる没入感

18年前の事件の最初の被害者、クラスメイトの雛月加代(ひなづき かよ)。 彼女は家庭で壮絶な虐待を受けており、心も体もボロボロでした。

悟は、彼女が殺される「Xデー」を回避するために、必死で彼女に近づき、友達になろうとします。

この過程が、本当に泣けるんです。 心を閉ざしていた加代が、悟の不器用だけど真っ直ぐな優しさに触れて、少しずつ、本当に少しずつ表情を変えていく。

読者は悟に感情移入して、本気でこう思います。「頼むから、この子を幸せにしてやってくれ!!」と。

ただの「被害者A」ではなく、「守るべき大切な存在」として描かれるからこそ、サスペンスの緊張感が倍増するのです。

真犯人が最後までわからない

ミステリー好きの僕でも、中盤まで犯人が誰なのか確信が持てませんでした。 それくらい、伏線の張り方が巧妙です。

怪しい人物はたくさんいます。 でも、「こいつか?」と思うとアリバイがあったり、「いや、この人かも」と思うと予想外の行動をとったり。

そして、犯人が判明した瞬間の「背筋が凍る感覚」。 あのシーンの演出は、漫画史に残るトラウマレベルの恐怖です。

全9巻という「完璧な尺」

長編漫画も良いですが、ダラダラと引き伸ばされると中だるみしますよね。 『僕だけがいない街』は全9巻。

  • 序盤:謎の提示とリバイバル
  • 中盤:過去編(加代を救う戦い)
  • 終盤:現代編(真犯人との決着)

この構成が美しすぎます。無駄なコマが一つもない。 週末の半日あれば読み切れるボリュームで、映画を一本見たような満足感が得られます。

ここから先は、物語の核心に触れるネタバレが含まれます。 犯人の正体や、ラストシーンの意味についてもガッツリ語ります。
まだ読んでいない方は、ここで引き返してください。 そして、どうかネタバレを踏まずに、ご自身の目でこの「リバイバル」を体験してきてください。約束ですよ?

ネタバレあり:心に残る名シーンとキャラクター考察

読み終わりましたか?

ここからはネタバレ全開で語りつくしていきます。

雛月加代の朝食シーンで号泣しない奴いる?

僕が一番泣いたシーン。それは誘拐や事件の解決シーンではありません。 悟の家で、加代が「普通の朝ごはん」を食べるシーンです。

温かいご飯。卵焼き。お味噌汁。 虐待を受け、冷たいパンしか与えられていなかった加代にとって、それは見たこともない「家族の温かさ」でした。

涙を流しながらご飯を食べる加代。 それを見て、何も聞かずに見守る悟の母・佐知子。

このシーンがあるからこそ、加代というキャラクターが「救われた」という実感が湧くんですよね。

ガンマ先生

あのシーン、アニメ版も最高なんですが、漫画版の加代の表情の崩れ方が本当にグッとくるんですよ。「私、幸せでいいのかな」みたいな戸惑いと嬉しさが混ざっていて…あ、思い出したら涙が…

ヒーローは遅れてやってくる。ケンヤの有能さが大人顔負け

悟の親友、ケンヤ。 この男、小学5年生にしてスペックが高すぎる。

悟がリバイバルで精神年齢29歳になっているのに、対等に会話ができている時点で異常です。でも、ケンヤの凄さは頭の良さだけじゃない。「友達を信じて待つ力」です。

悟が何かを隠していることに気づきながら、「お前が話せるようになるまで待つ」と言える器の大きさ。 そして、悟が昏睡状態になった後の15年間、彼は悟を目覚めさせるために弁護士になり、ずっと戦い続けていた。

真のヒーローはケンヤかもしれない。そう思わせるほど魅力的なキャラクターでした。

犯人「〇〇」の正体と、歪んだ正義感

物語の真犯人、小学校の担任・八代学(やしろ がく)

彼が犯人だとわかった時の「車の中のシーン」。 悟がシートベルトを外すことができないまま湖に溺れていく。鳥肌が立ちすぎて、部屋の暖房をつけ直したのを覚えています。

なぜ彼は悟に興味を持ったのか?

八代の動機は、非常に歪んだものでした。 彼には「クモの糸」が見える。ターゲットの頭上に垂れる糸を切ることで、自分の存在意義(生きている実感)を確認する。

本来、悟はターゲットではありませんでした。 しかし、悟がことごとく自分の計画(加代の誘拐など)を阻止してくる。 八代にとって悟は、「唯一、自分の計画を理解し、対等に渡り合える存在」になってしまったのです。

「お前は俺の生きがいだった」

悟を川に沈めようとした時、そして悟が眠っている15年の間、八代もまた「生きた心地」がしていなかったはずです。 彼にとって悟は、敵でありながら、唯一の理解者(と彼が勝手に思い込んだ相手)だった。

この「犯人が探偵役(主人公)に執着する」という構図は、『ダークナイト』のジョーカーとバットマンにも通じるものがあります。 歪んだ愛憎劇としても、この作品は超一級品です。

議論を呼んだ「ラスト」について

ネット上の「NTR」論争に対する僕の答え

さて、この作品を語る上で避けて通れないのが、「ラストのカップリング問題」です。

悟が15年の昏睡から目覚めた時、彼が命がけで守った雛月加代は、悟の親友であるヒロミと結婚し、子供を産んでいました。

ネット上では当時、 「NTR(寝取られ)だ!」 「悟が報われない!」 と荒れに荒れました。僕も最初はショックでした。「え、待ってないの?」と。

でも、何度も読み返すうちに、「これ以外のラストはありえない」と思うようになりました。

悟が本当に望んだものは何だったのか?

悟が過去に戻って成し遂げたかったこと。 それは「加代と恋人になること」ではありません「加代が殺されず、幸せな未来を掴むこと」でした。

もし加代が、昏睡状態の悟を15年間ずっと独身で待ち続けていたらどうでしょう? それは「悟の呪縛」に囚われていることになります。 加代の時間が、悟が眠ったあの日から止まったままになってしまう。

加代がヒロミと結婚し、子供を授かり、幸せな家庭を築いている。 これこそが、悟が命をかけて勝ち取った「結果」だった。

加代が連れてきた赤ちゃんを見て、悟が涙を流して喜ぶシーン。 あれは悔し涙なんかじゃない。「俺のやったことは無駄じゃなかった」という、魂の救済の涙です。

タイトル『僕だけがいない街』が回収された瞬間の鳥肌

そして最後に、タイトル回収が来ます。

みんなが笑って暮らしている街。 そこには、加代も、ヒロミも、母さんも、ケンヤもいる。 でも、15年間の時間、そこには「悟だけがいなかった」。

悟の犠牲(不在)の上に、みんなの幸福な日常が成り立っている。 少し切ないけれど、悟はそれを「悲劇」とは捉えません。

ラストシーン、高架下で愛梨と再会し、悟は言います。

「僕だけがいない街。そこに刻まれた時間は、僕の宝物だ」

僕だけがいない街:藤沼悟

この台詞で、僕は完全に救われました。 悟は失ったんじゃない。未来を守り抜いたんだと。

この完璧な着地。 「加代とくっついてほしかった」という読者のエゴすらも包み込む、優しくて力強いラスト。 文句なしの傑作です。

僕だけがいない街をお得に読む方法【アニメ・実写情報も】

最後に、ここまで読んで「もう一度読み返したい!」と思った方や、「アニメしか見てないから原作も読みたい」と思った方へ、お得な情報をお伝えします。

漫画版・アニメ版・実写版の違いとおすすめ

原作漫画(全9巻): 情報量が圧倒的。心理描写や伏線回収を完璧に楽しみたいならこれ一択。

アニメ版(全12話): 原作に忠実で非常にクオリティが高い。OP/EDも最高。U-NEXTで見れます。

Netflixドラマ版: 実写の中ではかなり評価が高い。原作の雰囲気をよく再現しています。

個人的には、まずは原作漫画を読んでほしいです。 悟のモノローグ(心の声)の深さは、文字で読んでこそ響くものがあります。

まとめ:まだ過去は変えられる。今すぐ読んでほしい

『僕だけがいない街』は、単なるタイムリープものではありません。 「踏み込む勇気」を教えてくれる物語です。

悟は言いました。 「言葉って、口に出して言っているうちに、本当になる気がする」

もしあなたが今、何かに後悔していたり、現状を変えたいと思っているなら。 この漫画を読んでみてください。 きっと、一歩踏み出すための勇気をもらえるはずです。

読み終わった後、あなたはきっと、大切な人に会いたくなるでしょう。

ガンマ先生

最後まで読んでくれてありがとうございました!
次回は、これまたタイムリープの名作『サマータイムレンダ』について語ります。僕だけがいない街に負けず劣らずの名作です!

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