【完結】プラチナエンドはなぜ「愛すべき駄作」になったのか?黄金タッグが描いた「虚無」の正体

プラチナエンド

結論から言います。 この漫画は、漫画史に残るレベルの「素材殺し」です。

  • 原作:大場つぐみ(『DEATH NOTE』『バクマン。』)
  • 作画:小畑健(同上)
  • テーマ:天使、神選び、バトルロイヤル

これだけ最高級の食材を揃えて、どうしてこうなったのか。 第1巻の掴みは完璧でした。「これは次世代の看板漫画になる!」と誰もが震えたはずです。 しかし、読み進めるにつれて雲行きが怪しくなり、中盤からは迷走し、そして最終回で読者を「虚無」の底へと突き落としました。

今回レビューするのは、ある意味で伝説となった怪作『プラチナエンド』です。

正直に言いますが、エンタメとしてのカタルシス(スカッとする展開)を求めている人は、今すぐ回れ右をしてください。 この作品にあるのは、ウジウジ悩む主人公と、延々と続く「幸せとは何か?」という哲学議論、そして賛否両論(というか否が多め)の衝撃的なラストだけです。

ですが、だからこそ語りたい。 なぜ黄金タッグは、この結末を選んだのか? 怖いもの見たさでこの「劇薬」に触れてみたい方だけ、続きを読んでください。

ガンマ先生

僕も全巻読みましたが、読了後の感想は「……え?」でした。 でも、画力だけは国宝級です。絵を見る画集としてなら満点ですよ。

目次

期待値はMAXだった!プラチナエンドの「神素材」たち

まずは、連載開始当初に世界中が期待した、本作の素晴らしい設定(素材)をおさらいしましょう。

作品データ
  • 作品名:プラチナエンド
  • 原作:大場つぐみ
  • 作画:小畑健
  • 連載:ジャンプスクエア(2015年〜2021年)
  • 巻数:全14巻(完結済み)
  • ジャンル:ダークファンタジー、サスペンス
  • あらすじ: 中学卒業の日、絶望してビルから飛び降り自殺を図った少年・架橋明日(かけはし ミライ)。 しかし彼は死ぬことなく、特級天使・ナッセによって救われる。 「私は貴方に生きる希望をあげる」 ナッセから「自由になれる翼」と「人を愛させる(あるいは殺せる)矢」を授かった明日は、自分が「次期・神候補」の13人のうちの1人に選ばれたことを知らされる。 神の座を巡り、翼と矢を持った候補者たちによる、殺し合いのバトルロイヤルが幕を開ける。

どうですか? このあらすじだけ見れば「面白くないわけがない」と思いますよね? 『未来日記』のような能力バトルに、『DEATH NOTE』の頭脳戦が加わる。 誰もがそう夢見ていました。第1巻までは。

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なぜ評価が分かれた?読み進めるのが辛くなる3つの「壁」

なぜ、この作品は「神漫画」になり損ねたのか? 読み進めるうちに多くの読者が脱落していった、3つの大きな壁(ストレス要因)について解説します。

1. 主人公・架橋明日(ミライ)の「不要な善偽」

最大の要因は、主人公の性格です。 『DEATH NOTE』の夜神月が「新世界の神になる」と積極的に行動する悪のカリスマだったのに対し、本作の架橋明日は「幸せになりたいだけ」の受動的な善人です。

それは良いのですが、彼はとにかく戦いません。 敵が殺しに来ているのに、「誰も傷つけたくない」「殺すくらいなら殺されたほうがいい」と悩み続け、反撃しない。 この「ウジウジ展開」が延々と続くため、バトル漫画としての爽快感は皆無です。 「いいから早く矢を撃てよ!」とイライラしてしまった読者は数知れず。

2. 中盤の「メトロポリマン編」以降の失速

序盤に登場するライバル、メトロポリマン(生流奏)。 彼は素晴らしい悪役でした。目的のためなら一般人も殺す冷徹さと、ヒーローのスーツを纏う歪んだ正義感。 彼との戦いまでは、まだ緊張感がありました。

しかし、彼が退場した後、物語は急速に失速します。 新たな敵が現れても、バトルというよりは「神とは何か?」「死とは何か?」という議論がメインになり、画面が文字だらけになっていきます。 「あれ、僕たちは道徳の教科書を読まされているのかな?」という錯覚に陥るのです。

3. 「幸せとは何か」というテーマの重さ

作者・大場つぐみ先生が描きたかったのは、おそらくエンタメではなく「哲学」だったのでしょう。 しかし、少年漫画(掲載誌はSQですが)の読者層が求めていたのは、特殊能力を使ったスリリングな攻防です。

「幸せ」という曖昧なゴールに向かって進むため、物語に明確な「勝利条件」が見えづらい。 これが、読んでいて「どこに向かっているんだ?」という中だるみを生んでしまいました。

それでも「画力」は国宝級!ビジュアルの魅力

辛口なことを言いましたが、これだけは擁護させてください。 小畑健先生の作画は、神の領域です。

天使のデザイン、特に主人公につく特級天使・ナッセの神々しさと不気味さが同居したビジュアル。 そして、候補者たちが纏う「天使の鎧(スーツ)」のメカニカルで美しい造形。 これを見るためだけにページをめくる価値はあります。

ストーリーの評価は地に落ちても、画集としての評価は星5つ。 このアンバランスさこそが、『プラチナエンド』という作品の奇妙な魅力(?)なのかもしれません。

さて、ここから先はいよいよ、ネットをざわつかせた衝撃の後半戦について語ります。 なぜ物語は迷走したのか? そして伝説の「全カット(全消滅)エンド」とは何だったのか?

ここから先はネタバレを含みます。 「ハッピーエンド以外は許せない」という人は、ここで引き返してください。 ここから先にあるのは、救いのない「虚無」です。

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迷走?哲学?後半の展開を整理する

『プラチナエンド』の評価が急落したのは、間違いなく物語の折り返し地点からです。 一体どこで歯車が狂ったのか、冷静に振り返ってみましょう。

メトロポリマン(生流奏)編までは「まだ」面白かった

序盤のボス、メトロポリマン。 彼は素晴らしい悪役でした。 「愛する妹を取り戻すために神になる」という明確な動機があり、そのために他の候補者を容赦なく殺す。 彼との戦いは、知略と能力がぶつかり合う、私たちが求めていた「デスゲーム」そのものでした。

遊園地での決戦、そしてナッセの翼を使った空中戦。 画力も相まって、ここまでは確かに名作の予感がありました。 しかし、彼を倒した後、物語から「緊張感」という最大の武器が失われてしまいます。

主人公の「殺さない」縛りが生んだ停滞

メトロポリマンがいなくなり、残ったのは「誰も殺したくない主人公」と「議論好きなインテリたち」でした。

主人公・明日の「誰も傷つけたくない」という思想は、人間としては立派ですが、バトル漫画の主人公としては致命的な欠陥です。 敵が出てきても、まず説得。捕まえても、殺さずにどうするか悩む。 この繰り返しにより、物語のテンポは著しく低下しました。

読者は「デスノート」のようなヒリヒリする心理戦を求めていたのに、提供されたのは「道徳の授業」のような優等生的な悩みだったのです。

最後の敵・米田教授と「神はいない」論争

そして極めつけが、最後のライバル(?)として登場した米田我工(よねだ がく)教授です。 ノーベル賞受賞の天才教授である彼は、神候補でありながら「神なんていない」「神は宇宙人が作ったクリーチャーだ」と主張します。

ここから、物語は完全に「退屈な授業」状態に突入します。

  • 神は存在するのか?
  • 偽りの神を選ぶことに意味はあるのか?
  • 人は死ぬべきか、生きるべきか?

ページを開けば、そこにあるのは文字、文字、文字。 アクションはほとんどなく、おじさんと高校生が延々と哲学議論を交わす展開。 これが『DEATH NOTE』のように「議論自体が罠になっている」なら面白いのですが、本作の場合は「本当にただ議論しているだけ」だったのが辛いところです。

【神選びの結末プロセス】 議論の末、どう決着したか覚えていますか?

  1. 米田の提案:「神なんて生まれなければいい。候補者全員で死のう」
  2. 明日の反論:「それでも生きて幸せになりたい」
  3. 中海(なかうみ)の介入:自殺志願者の中海修滋が「僕が神になって、何もしないで見守るよ」と提案。
  4. 決定:中海が神になり、他の候補者は人間界に戻る。

「えっ、バトルロイヤルの勝者、主人公じゃないの?」 そう思った方も多いでしょう。 主人公は神にならず、一番死にたがっていた少年が神になる。 この捻くれた結末こそが、あの衝撃的なラストへの布石だったのです。

大炎上した最終回「全生命の消滅」をどう受け取るか

最終回、人類は滅亡しました。 隕石が落ちたわけでも、宇宙人が攻めてきたわけでもありません。 「神が自殺したから」です。

神の自殺と、道連れにされた人類

神に選ばれた自殺志願者の少年・中海修滋。 彼は神になった後、天空から人間界を見下ろし、こう結論づけました。

「やっぱり、死んだほうがいいや」

彼が自殺(消滅)を選んだ瞬間、神とリンクしていた「クリーチャー(創造主)」も消滅。 その結果、地球上の全人類、動植物、すべての生命が道連れとなり、唐突に「無」になりました。

主人公の明日(ミライ)とヒロインの咲は、ようやく平穏な幸せを手に入れ、花屋を営んでいました。 しかし、その幸せも一瞬で消滅。 最期の瞬間、明日は咲に「幸せだった」と言い残して消えますが、読者としては「ふざけるな!」の一言でしょう。

全14巻かけて描いてきた「生きる意味」「幸せになるための戦い」が、たった一人の神の気まぐれな自殺ですべて「無意味(徒労)」に帰したのです。 これほど虚しい読書体験は、そうそうできるものではありません。

これは「打ち切り」だったのか?

この唐突すぎる幕切れに、「打ち切りだったのでは?」という噂も飛び交いました。 しかし、僕は「当初から想定されていた結末」だと推測します。

作者・大場つぐみ先生は、本作を通じて一貫して「死の救済」や「生まれなければ苦しまない」という反出生主義的なテーマを描いていました。 つまり、物語としては「全滅」こそが、この歪んだ世界に対する唯一の「正解(ゴール)」だったのでしょう。

ですが、「哲学的正解」が「エンタメ的正解」とは限りません。 読者は、主人公たちが苦難を乗り越えて幸せを掴み取る姿(カタルシス)を見たかった。 作者の思想が、読者の快感を上回ってしまった結果、このような「置いてけぼりエンド」になったのだと考えられます。

「DEATH NOTE」の夜神月ならどうしたか?

比較対象としてよく挙げられる『DEATH NOTE』。 夜神月も最後は無様に死にましたが、彼は最後まで「生への執着」を見せました。 自分の理想を実現するために足掻き、泥水をすすってでも生きようとした。 だからこそ、彼の死にはドラマがありました。

一方、『プラチナエンド』の神(中海)は、あっさりと死を選びました。 「能動的な悪(月)」と「受動的な虚無(中海)」。 どちらが物語として面白いかは、火を見るよりも明らかです。 黄金タッグは、今回は「主人公の情熱」という最も大切なピースを欠いてしまったのかもしれません。

まとめ:漫画家志望者は必読!「やってはいけない」の教科書として

『プラチナエンド』は、ある意味で非常に勉強になる作品です。

  • 設定がどんなに素晴らしくても、主人公がウジウジしていたら読者は冷める。
  • 画力が国宝級でも、会話が哲学議論ばかりだとページをめくる手が止まる。
  • そして、積み上げた物語を「無」にするオチは、読者にトラウマを植え付ける。

「名作にはなれなかったが、記憶には残る怪作」。 それが、全14巻を読み終えた今の正直な評価です。

もし、あなたが「本当にそんなにひどいの?」と興味を持ったなら。 あるいは、「虚無」を体験してみたいという怖いもの知らずなら。 ぜひ、ご自身の目でこのラストシーンを目撃してみてください。

読み終えた後、きっとこう呟くはずです。 「……で、何だったの?」と。

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